股関節の作り
股関節が痛む理由は何か。まずは股関節の作りから説明していきます。
股関節は大腿骨の先端にあるボール形の大腿骨頭がそれの受け皿となる寛骨臼という骨盤の凹みにはまり込んだ作りになっています。骨同士の連結を関節包が包み込み、さらに幾つもの靭帯や筋肉が覆うことで股関節を安定させています。
滑液…関節包の内側から分泌され、骨同士の摩擦を減らし、軟骨に酸素や栄養を届けます。
関節唇…寛骨臼の縁に付着している柔らかい軟骨。大腿骨頭と寛骨臼の繋がりを安定させています。
関節軟骨…寛骨臼と大腿骨頭の表面を覆い、骨同士が直接当たらないようにして股関節にかかる荷重を分散するクッションの役割があります。
軟骨には血管が通っておらず栄養補給は滑液に依存しているためすり減っても再生されません。
股関節痛はこの軟骨の摩耗によって起こることが多いです。
軟骨の減りで痛みが起こる理由
軟骨の減ることで何故痛みが起きるのでしょうか?それは軟骨というクッションが無くなることで骨同士の衝突を防げなくなるためです。
軟骨には痛みを脳に伝える神経が無いため、摩耗初期には軟骨表面が粗くなるだけで痛みには気づきません。痛みが出るのは骨に衝撃が伝わるようになってからです。
関節の局所に荷重がかかり続けると、軟骨に徐々に亀裂、摩耗が起き、軟骨下の骨に衝撃が伝わりやすくなり、最後は骨が露出し直接骨同士がぶつかることで正常に歩けなくなるほど痛みを感じるようになります。
軟骨が減りやすくなる原因
軟骨の減りやすくなる原因として加齢や骨の未発達(臼蓋形成不全)、肥満などがありますが筋肉のコリも原因のひとつです。
股関節を包む筋肉には縮むことで骨を動かす働き等の他に動いたときに骨がズレないように寛骨臼に引き付け関節を安定させる働きがあります。
正しい位置で関節を安定させるには、股関節にくっつく筋肉がそれぞれ同じ程度の柔軟性であることが重要です。
でないと固まった筋繊維(コリ)の方向に骨が引っ張られやすくなるため、関節が不安定な状態に陥ってしまいます。
例えば、腸腰筋という腰骨、骨盤の内から股関節の前を通る筋肉があります。
この腸腰筋が固くなると骨盤が前に引っ張られて倒れ、太腿の前側の筋肉が緊張状態で固くなります。
骨盤前傾のため大腿骨頭と寛骨臼の合わさりが正常な位置ではなくなり、股関節内の荷重に偏りが出て均一に圧を分散することができなくなります。
また、後ろ側のお尻や裏ももの筋肉は逆に弱くなり歩行時の体重移動が不安定で、歩いたときの衝撃が直接股関節にが伝わりやすくなります。
この状態が長年続くと徐々に軟骨が薄くなり、ある時急に股関節が痛むようになるのです。
このように一部の筋肉が固いことで股関節の可動域に制限→それが動きに影響を及ぼし癖として定着→更に股関節の動きに影響…と負のサイクルが出来上がってしまいます。
そのため股関節痛の改善には、筋肉のアンバランスを改善して正しい関節の位置で衝撃を分散できるようにする必要があります。
股関節の負担になること
股関節に負担がかかりやすい姿勢と行動
・しゃがむ
・足を椅子の座面の上に置きながら体育座り
・長時間の立位、歩行、走行
✳それぞれ体重の1倍、3倍、5倍程度股関節に負担がかかる。
・階段昇り降り
負担がかかりやすい職
立ち仕事、重量物を扱う(引越し屋、配達員など)、プロスポーツ選手(レスリングなど)
等などです。
特にしゃがみ込みから起き上がるときの股関節には体重のおよそ10倍もの力が加わるため注意が必要です。
しゃがむ→起き上がり時は四つん這いから立ち上がったり、物に掴まりながら起き上がったほうが股関節にかかる圧力を分散しやすいです。
股関節痛に対する鍼治療
股関節痛の鍼治療として大事にしていることは股関節の根本(寛骨臼)に向けて鍼を大量に刺すことです。
股関節に関係する筋肉は殆どが骨盤から始まり、大腿骨の大転子近辺に付着(停止)します。
股関節痛持ちの患者さんは大体、停止部が固く動きが悪いため寛骨臼に向けて様々な場所、角度で針の長さを変えながら刺していきます。
傷んでいる部位に鍼が届くとズシーンと重い感覚があり、まるで痛む場所を強く指圧されているような感じがします。
寛骨臼周りは特に傷んでいることが多いのでそういった感覚が現れやすく、患者さんの反応を確認しながら痛む部位や原因の筋肉は何か考えながら鍼を刺していきます。
鍼後の過ごし方
〜オススメの過ごし方〜
○横向きで寝る場合、痛む方を上にして寝る
骨盤の重みが負荷となるため。
○杖を使う
鍼治療期間は股関節にできるだけ負担をかけないように杖を使うことをオススメします。
※杖の高さ=身長÷2+3センチ
※痛む方とは逆の方の手で杖を持つ
○お風呂に浸かる
40度以下のぬるま湯で20分以上
○鍼治療後当日は禁酒
○鍼後の激しい運動、筋トレは避ける
まだ血流循環が回復していない状態で激しい運動をすると鍼の効果が落ち、逆に痛みが強くなったりするため。